看護師の急変対応はBLS/ACLSからでは遅い!
医療機関で行われている急変対応研修のほとんどは、BLS、つまり心肺蘇生法です。
しかし、「急変」とは心肺停止のことでしょうか?
突然の心停止ももちろんあります。しかし、病院における心停止の8割には何らかの予兆があったという報告もあります。また、特に子どもの心停止の原因は呼吸障害と循環障害(ショック)が大半であり、前駆症状があります。
心停止に至るまえの、様態変化の段階で気づき、介入する、それこそ、ベッドサイドにいる看護職の役割ではないでしょうか?
時代は非心停止対応教育に
日本で、医療従事者のための体系的な救急対応教育が確立したのは、米国からアメリカ心臓協会(AHA)のBLSとACLSが導入された2003年頃からです。
一気にブレイクし、全国の病院がBLS教育導入に躍起になった時代がありました。しかし、それが落ち着いてきた今、誰もが疑問に感じるようになりました。
本当に心停止後からの対応訓練でいいのだろうか? と。
近年、世界の病院内患者安全教育の中で話題となっているのは、Rapid Response Team(RRT)や Medical Emergency Team(MET)です。
これは、心停止対応で呼ばれるCodeチーム(ACLSチーム)に対して、心停止前の「なにかおかしい」という段階で、現場スタッフから要請を受けて、患者の評価アセスメントを行い、安定化を図る看護師や呼吸療法士からなる医療チームです。
心停止に繋がりかねない危険な徴候(=生命危機徴候)を察知し、先回りして対応し、心停止を未然に防ごうという発想で、医療機関での患者安全のために必要なシステムとして世界的に注目されています。
そんな非心停止対応をする専門チームの能力開発や育成に注目されているのが、AHA-PEARSプロバイダーコースです。
PEARSプロバイダーコースとは
PEARSは、Pediatric Emergency Assessment, Recognition, and Stabilizationの略で、ペアーズと読みます。
蘇生科学の世界権威であるアメリカ心臓協会と、米国小児科学会が協同で作成した小児を専門としない医療従事者を対象とした救急アセスメント&安定化の技術を身につけるプログラムです。
救急アセスメントの手順は、国際標準があります。多少の方言、差異はありますが、命に関わる問題を優先的にチェックし、段階的に細かい問題を探るという方法を取っています。
AHA-PEARSでは、第一印象と、一次評価という2段階での判定を行いますが、それを実際の生命危機状態にある患児の動画を見ながら訓練を行うというのが特徴的です。
PEARSと同じ領域を扱う類似コースは、日本国内では「患者急変対応コースfor Nurses」がありますが、映像教材はどうしても役者の演技なので限界があります。ここがPEARSが、患者急変対応コースの決定版と言われる部分でしょう。